NTT-ATアイピーエス株式会社
「言われたことをやる」から「自ら考え、行動する」へ
~セルフ・キャリアドックが育んだ主体性
活用テーマセルフ・キャリアドック
所在地神奈川県川崎市幸区大宮町1310 ミューザ川崎セントラルタワー24階
業種サービス業(他に分類されないもの)業
設立平成13年8月
従業員217名
導入の経緯
指示されたことだけでなく、自ら課題を見つけて行動するようになって欲しい
当社は、主にグループ会社の人事・給与・経理といった間接業務の受託をはじめとして、アウトソーシングサービス、プロフェッショナル人材サービス、コンサルティングサービスなどを展開しています。最近では、委託元の各事業所が個別で行っている共通の業務を集約して請け負うことで、委託元が本業に専念できるようにサポートする「シェアードサービス」の構築を目指しています。
専門的な業務が多いため、これまでは派遣スタッフとして業務経験を積んだ社員を正社員として登用する形で組織を拡大してきました。ただ、与えられた役割を着実に果たす社員が多いものの、会社や上司の指示を待つ傾向があり、自ら課題を見つけて行動したり、周囲を巻き込みながら新たな取組を進めたりする場面は限られていました。今後進めていくシェアードサービスは、社員が自分の裁量の中で委託元のニーズに対応する必要があり、それには社員が指示されたことだけでなく、自分が必要だと思ったことを積極的に行動するようになって欲しいという期待を持っていました。
社員の主体性を育てるには、社員が自身のキャリアを見つめ、この会社でキャリアを積み上げていこうと思えるようになることが大切だと考え、社員のキャリア形成を支援するために社内キャリアコンサルタントの育成に着手しました。資格取得の希望者を募ったところ12名もの応募がありましたが、キャリアコンサルタントをどのように育成・活用して社員のキャリア形成を支援していくかについては模索が続いていました。こうした状況で知ったのがセルフ・キャリアドックです。社内キャリアコンサルタントの1名からセルフ・キャリアドック導入の支援事業があることを聞いて、さっそく導入支援を受けることにしました。
取組内容と効果
自ら考え行動する社員が増加し、会社の風土が変わり始めた
令和5年度のセルフ・キャリアドック導入支援では、社長を含む経営層、キャリアコンサルタント有資格者など31名を対象に、キャリアセミナーおよびキャリアコンサルティングを実施しました。
実施前、経営層には「どのような効果があるのか」「本当に必要な取組なのか」という声がありました。また社内キャリアコンサルタントからは、本業との兼務で活動することから、活動時間の確保への懸念もありました。そのため、対象者に経営層を含めて、キャリアセミナーやキャリアコンサルティングを体感することでキャリア形成支援への理解を深めてもらうことにしました。社内キャリアコンサルタントに対しては、キャリア支援に向けた実践的な学びの機会として位置付けました。
まずは、セルフ・キャリアドック導入のためのガイダンスセミナーを実施しました。前半は、内的動機や価値観、Will(何をしたいのか)・Can(何ができるのか)・Must(何をなすべきか)のフレームで自己理解を深める、といったキャリアの基本的な考え方と、表やグラフを用いてキャリアコンサルティングの意義・効果を伝えました。後半は、これまでの人生を振り返って出来事と満足度をグラフにするライフラインチャートを作成し、その内容を共有するグループワークを行いました。普段は業務に関する話題が中心の経営層が、楽しそうに対話をしながら内省を深め、自己理解に取り組んでいたのが印象的でした。
次に、キャリアコンサルティングを実施しました。参加した社内キャリアコンサルタントからは、演習では「助けてあげたい」気持ちになりがちだったけれど、冷静な対応で面談をするという自分にはないスタイルに出会えて勉強になった、という声がありました。また経営層からは、やりたいことは65歳を過ぎてからではなくて、今からでも少しずつチャレンジしてみようと思えるようになり、背中を押された、という感想がありました。面談後に未来のことを楽しそうに話している経営層の姿からも、キャリアコンサルティングのよさを実感してもらえたのではないかと思います。
参加者の反応がよかったことから、本格的なキャリア支援体制の構築に向けて、令和6年に「キャリア開発支援プロジェクトチーム」を設置し、当社独自のセルフ・キャリアドックの取組を開始しました。
年代やキャリアステージに応じた支援をするために、若手社員向けには社長がファシリテーターを務めるキャリア勉強会、40代にはWill・Can・Mustのフレームを活用したキャリア研修、50代にはライフプランを含めたキャリア研修、60代には定年後を見据えたキャリア研修を用意し、全員に対してキャリアコンサルティングを実施しています。キャリアコンサルティングを受けた社員からは、「自分のキャリアを考えて話すのが楽しかった」という声や、以前より自己開示ができるようになった様子が見受けられました。
また、Will・Can・Mustのフレームから自身の将来像や目指したい姿を整理する「キャリアデザインシート」を導入し、作成後には上司との対話の機会を設けました。これまでの評価面談は、目標の達成状況や取組の振り返りといった評価に関する話が中心でしたが、今後のキャリアの方向性や、そのために必要な経験について話し合う機会が加わりました。その結果、社員から「上司と将来について話せるようになった」という声が聞かれるようになり、付随して評価に対する納得度も高くなっています。
さらに、部署や役職を越えた交流の場として「おしゃべり箱」というランチ付きの社員交流会を実施しています。当初は育児や介護に関する気軽な情報交換や交流の場として始めたのですが、キャリアデザインシートを導入する際に目的や取り組み方を伝えるキャラバンをここで実施しました。現在は価値観カードを活用したワークを行っていて、社員が自身の価値観や経験を見つめながら、他部署社員の考え方に触れることで自己理解を深め、自身のキャリアや今後やりたいことを考える場にしています。
こうした取組は、社員の行動に変化をもたらしました。その代表的な事例が、社員自らが課題を設定して改善に取り組む「KAIZEN活動」です。開始当初は、会社から指名されたメンバーが中心でやらされているという意識を持つ社員も少なくありませんでしたが、現在では自ら課題を見つけて組織を越えてメンバーを集め、改善提案を行う社員が増えています。例えば、全社のチームにインタビューを行い社内ポータルに掲載するチーム紹介や、社員が自ら講師となりナレッジやスキルを共有する専門家研修といった活動が行われており、年々充実した内容になっています。毎年開催する発表会では、以前は参加に消極的な社員もいましたが、今では他のチームの発表に対して積極的に質問するようになっています。
また、社員の資格取得が増加し、取組前は20~25件程度だったのが、直近1年で39件にのぼっています。人数だけでなく高度化も進んでおり、社長表彰の対象である国家資格や専門資格等の取得者は、令和6年度に5名だったのが令和7年度は10名へと倍増しました。取得した資格には、経理・財務スキル検定FASSレベルB、国家資格キャリアコンサルタント、ビジネス実務法務検定2級、CompTIA Security+、IELTS6.0、個人情報保護士、情報セキュリティ管理士といったものがあり、レベルの高い資格に挑戦して自身を高めようとする意欲が行動と結果に表れています。
社内公募制度であるジョブ・マッチングへの応募も増加し、これまで異動希望はなかったのですが、直近2年間で10件の応募がありました。
特に印象的だったのは、キャリアを見つめ直して自分から転居を伴う異動に挑戦した社員がいました。この社員は、今後のキャリアを考えて今いる部署だけでなく他の仕事も経験したいと思ったものの、それには転居が必要で、これまであまり例のない挑戦だったことから、「手を挙げたら行けるのでしょうか」と相談してくれたのです。とても勇気のいるチャレンジだったと思います。
こういった事例に加え、育児休業から復帰した社員からは、会社の雰囲気が以前と変わったという声も聞かれました。このことからも、自ら考え行動する風土が少しずつ会社全体へ広がっていると感じています。
今後の取組
一人ひとりが描くキャリアを実現し、いきいきと働き続けられる会社に
今回、セルフ・キャリアドックの導入を契機として、対話の機会を継続的に設けることで、社員が自らのキャリアを考え行動するきっかけづくりに取り組んできました。
今後シェアードサービスを進める中で、社員一人ひとりが主体的に考え行動することの重要性は、より高まっていくと考えています。そのため、年代やライフステージに応じたキャリア研修やキャリアコンサルティングを継続するとともに、上司と部下が対話をする機会の充実や組織を横断する活動の促進を通じて、社員が自身の強みや今後やりたいことを見つめて、行動を起こしやすい環境づくりを進めます。その積み重ねが、社員の成長だけでなく会社の成長にもつながると考えています。
これからも、対話を大切にするキャリア形成支援を通じて、一人ひとりが描くキャリアを実現し、いきいきと働き続けられる会社を目指していきます。
