社会福祉法人峰陽会 あずま保育園
キャリア形成支援で職員一人ひとりの主体的な学びと挑戦を生み出す
活用テーマジョブ・カード活用
所在地栃木県宇都宮市宿郷2-8-1
業種医療・福祉業
設立平成18年3月
従業員40名
導入の経緯
多様な職員が忙しく働く保育園で、キャリアを見つめ直す場をつくる
当園は、地域に根ざした保育園として、子ども一人ひとりの成長を大切にしながら運営しています。保育の仕事そのものに関しては、職員が取り組む現場の工夫を園として後押しするなど、職員の主体性を尊重する方針で事業運営をしてきました。一方、職員のキャリアに関しては、子どもの安全や成長支援が最優先にならざるをえない保育の現場において、職員を主体にした長期的な視点で考える余裕がなく、短期的な視点にとどまってしまうことが課題でした。
また、幅広い世代の職員が働いているため、職員によってライフステージや価値観が異なるのですが、多様なキャリア観への理解を深め、互いを尊重しながら成長できる組織風土を醸成していく必要性を感じていました。それが、経験豊富な職員が培った知識や技能を次世代へ継承し、将来的には園の運営を担う人材を計画的に育成することにもつながります。
さらに、保育ニーズの多様化が進む中で保育士にはより高い専門性と柔軟な対応力が求められており、蓄積してきた技能を継承するだけでなく、新たな技能を身につけることが必要です。
これらの課題を解決するために、園長と職員の個人面談を年に1回実施していますが、次年度のクラス運営をどうするか、といった実務の話が中心になり、職員が自身のキャリアを見つめる場にする必要性を感じていました。そこで今回、面談に先立ち、職員が自身の将来像や内面の思いを率直に言葉にする機会を設けることが面談の質の向上につながることを期待して、キャリア形成・リスキリング推進事業の支援を受けることを決めました。
取組内容と効果
キャリアセミナーで深めた自己理解をきっかけに、保育と地域貢献への主体的な行動が始まる
今回の取組では、職員が自身を見つめ直して自己理解を深めるために、キャリアセミナーを開催しました。職員が参加しやすいよう園児の昼寝の時間帯に設定し、保育士のみならず、栄養士、調理師、事務員に園長・副園長も加えて計32名が参加しました。
セミナーでは、ジョブ・カード活用ガイドを用いて、これまでの職業人生を振り返り、その時々の主な出来事とその満足度を曲線でつなげる「ライフラインチャート」を作成し、自身の価値観や強み、満足度の変化を整理しました。保育士は子どものことを一生懸命考えるあまり、自分自身のことは後回しになりがちですが、「保育士を目指したきっかけはこうだった」「当時大切にしていた価値観が今は変化している」といった気づきを言語化することで、自己理解が深まったようです。満足度の変化をグラフで可視化することで、自分の現在を肯定的に捉える職員もいました。
グループワークでは、お互いの良いところや強みを伝え合う時間を設けました。当初は照れや恥ずかしさもありましたが、次第に職員同士のコミュニケーションが活発になり、「自分では気づいていなかった強みを知ることができた」といった声が多く聞かれました。職種や経験年数を超えて対話することで、互いの考え方や価値観への理解が深まり、信頼関係やチームワークの向上にもつながる有意義な機会となりました。
セミナー実施後、具体的な行動の変化が見られました。
園児の保護者に聴覚障害の方がいるのですが、預かっていた園児の様子を伝えたいのに伝わらないもどかしさを感じていました。保護者の方ともっとスムーズにコミュニケーションをとりたいという思いから手話学習の希望者を募ったところ、1名2名という少人数ではなく8名もの職員が手を挙げ、手話検定取得に向けて学び始めています。以前から誰か手話ができるといいと話題にはなっていたものの、実際の行動にはつながっていませんでしたが、職員が自分にできることを考えたり、ステップアップしたいという思いから、新たな学びに挑戦しました。保護者にも大変喜ばれ、職員のやりがいにつながっています。
また、意識が変化したことで、「地域や社会のために自分たちに何ができるか」を考えるようになり、在園児が小児がんを患ったことをきっかけに始まった小児がん支援の「レモネードスタンド活動」では、職員自らがフリーマーケットや手作りピザの販売などのアイデアを出して、実行する主体性が見られるようになりました。
さらに、園長との個別面談で自身の将来像や挑戦したいことについて具体的に語る職員が増えるなど、言われたからやるのではなく、こういうことに取り組みたいと、自らの成長を組織や地域への貢献と結び付けて考える意識が高まり、主体的に学び行動する風土の形成につながっていると実感しています。
日常の仕事の進め方にも変化が見られました。行事の準備や制作物を作成する際、できないところは頼る、チームで目標を達成するという意識が広がり、先輩、後輩を問わず声を掛け合う場面が増えました。職員同士がお互いの強みや価値観を理解し合うことで、コミュニケーションが活発になり、職種や経験年数を超えて支え合う風土が醸成されていると感じています。
その後、園長自身もキャリアコンサルタントの資格取得を目指して養成講座を受講しました。今回、問いかけを通じて相手の気づきを促し、自ら答えを見つけられるよう支援するキャリアコンサルティングの姿勢に触れることで、園長が聞きたいことを質問して職員がそれに答えるという形だった従来の面談を振り返り、職員が自分の言葉で語ることのできる面談が理想的なのではないかと感じたからです。講座で学んだことを今後の面談や職員のキャリア形成支援に生かしたいと考えています。
今後の取組
階層別支援と面談の充実で、職員の成長と園の発展の好循環をつくる
今回、職員一人ひとりが自身の強みや価値観を見つめ直し、主体的に学び、挑戦しようとする意識が高まったことは大きな成果でした。一方で、このような意欲や成長を個人の努力だけに委ねるのではなく、組織として継続的に支援し、人材育成や保育の質の向上につなげていくことが重要な課題です。
今後は、今回の取組を一過性のものにすることなく、職員の主体的な学びを組織の成長につなげるために、経験や役割に応じたキャリア形成支援を進めていきます。新人職員には基礎力や自己理解、副リーダー・リーダー層には後輩育成やチームづくり、主任層には園運営や人材育成に関わる学びの機会を設け、次世代を担う人材を育成します。
また、これまで年1回実施してきた園長面談を、実務の話題のみならずキャリア形成の機会として位置付け、対話を通して職員一人ひとりの強みや自身のキャリアに対する思い、将来の方向性を共有していくとともに、継続的な仕組みづくりとして、セルフ・キャリアドックの導入も検討します。
職員一人ひとりの「学びたい」「挑戦したい」という思いを大切にし、保育の質の向上や地域に貢献する活動と結び付けて、それぞれの成長が組織全体の発展につながる仕組みを構築していきたいと考えています。園長自身も学び続ける姿勢を大切にしながら、職員とともに成長し合える職場づくりを進め、地域や保護者から信頼され長く愛される保育園であり続けられるよう、今後もキャリア形成支援に継続的に取り組んでいきます。
