日電工業株式会社

　少子高齢化等の社会情勢の影響に加え、建設業は４K職場の印象が強く、足下では採用に苦戦しています。若手人材を育成し、技術を継承し、企業価値を高めるためにも、社員が生き生きと働けるようにエンゲージメントを高める必要があると考えていました。また社員が長く勤めたいと思える職場環境を整えることで、職場定着が進めば、優位な採用活動を進めるための一歩にもなると考えていました。

　人材育成ビジョンや人事労務制度の見直しを検討する中で、面談において社員の抱える仕事に関する悩み等の解決を支援し、モチベーションアップに繋げていく方法がないか模索していた際に、広島キャリア形成・リスキリング支援センターよりセルフ・キャリアドック試行導入の提案を受け、何か今後の取り組みのヒントを得る事ができるのではと考え実施を決めました。また、実施結果報告会で、キャリアコンサルタントから、自社の傾向や職場風土など客観的な見方や提案が得られれば、今後の人材育成ビジョンや人事労務制度の改善にも活用できると感じた事が申込の決め手です。

　取り組みを進める理解を得るために、ガイダンスセミナーの開始前に、取締役総務部長が本社から各営業所（本社・9営業所）に出向き、ガイダンスセミナー実施前に各営業所の全社員に向けて説明を実施しました。そして、セルフ・キャリアドック試行導入でキャリアを振り返る機会を提供し、社員一人ひとりに会社が本気で変わろうとしていることを社員に感じてもらえるように働きかけました。

　ガイダンスセミナーではキャリア研修の目的となぜキャリアを考える必要性があるのか、自己理解やキャリア形成に目的意識を持つなど、キャリア形成について共通認識を作りました。その後、ジョブ・カードのライフラインチャートを使って職業人生の振り返り、大事にしたい価値観、強みと弱みを整理、周囲からの期待を考えるワークを実施しました。そして、中国地方５県に在籍する短時間労働者を含む全社員を対象にキャリアコンサルティング面談を実施しました。

　キャリアコンサルティング実施後のアンケートでは、「悩みを相談する人がいない、現場の声をもっと聴いて欲しい」「部下・同僚とのコミュニケーションがとりづらくどうしたら良いかわからない」との声があり、また、「セルフ・キャリアドック試行導入の実施は、会社が社員の事を思っていると感じた」「今回の面談で自分を見直す良い機会になった。面談の事を振り返って業務に励みたい」「相手の変化を求めるだけでなく、自分の考えも変えていかないといけないと思った」などのコメント見られ、自分自身への気づきやモチベーションアップの機会にもなったようでした。

　こういった声は、組織にとっても大きな気づきに繋がりました。これまで毎年、人材育成を目的とした研修を行い、従業員の声を聞いてきたつもりでしたが、キャリアコンサルタントからの報告を聞いて、従業員はもっと上司や周りとのコミュニケーションを求めていること、もっと一人ひとりの声を聞くことを求めていることがわかりました。また、会社に期待することやキャリア形成に対する不安なども見えてきたことで、職場風土、人材育成、人事制度等について会社として検討する必要性、改善の方向を明確にすることができました。　

　以前から「エンゲージメントサーベイ」の導入を検討していたところ、今回のセルフ・キャリアドックの試行導入におけるキャリアコンサルティングを通じて、「現場の声を聞いて欲しい」「相談するところがない」「コミュニケーション不足」など従業員の声を知り、次年度、キャリア形成の項目を含めた、ワークエンゲージメント醸成・組織風土改革のための「エンゲージメントサーベイ」を本格導入するとともに、ウェルビーイングの取り組みとして、社外のキャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングの実施、ストレスチェックシステムの導入を計画しています。

　キャリアコンサルティングを実施することで、経験を振り返り、自分の強みや人生において何を大切にしたいか等の自分の思いに気づくことで、今後の職業人生のモチベーションアップに繋がることがわかりました。定期的な面談実施がキャリア形成支援になることが実感できたため、社外キャリアコンサルタントによる定期的なキャリアコンサルティングの実施について導入を検討したいと思います。次世代に繋ぐ企業として、従業員の笑顔と自信を大切に育みたいと思います。