社会福祉法人桃郷
職員が仕事の価値と職場の魅力を再認識、好循環による職場環境の改善で若手職員が定着
活用テーマジョブ・カードを活用したセミナー
所在地和歌山県紀の川市桃山町調月58番地の3
業種社会福祉事業
設立平成5年6月
従業員140名
導入の経緯
若手職員にキャリアの目標を持ち、長く働いてもらいたい
当法人は、発達につまずきのある子どもたちの保育が主な業務です。
保育業界は保育士の絶対数が不足していますが、その中でも特に障害児施設での保育(療養)には若い世代の応募が少なく、かつ定着しづらいことが課題となっています。当法人でも、創立当初から勤続している40代後半~50代ベテラン層、30代後半~40代前半の中堅層が保育現場の中心で、若手職員の割合は低くなっています。もともと応募者が少ない上に、採用後1年未満で離職も多く、3年以内には約7割が離職していることが原因です。
職員にモチベーションを持ってキャリアアップを目指してもらうには、経験年数等に応じた到達目標を明確にし、職務のレベルや各階層で求められる能力を示したキャリアラダーの仕組づくりが必要と考えていますが、給与面も含めたその仕組の整備は途上となっていました。また、運営する施設の数が増えたことから、新入職員が同期や年齢の近い職員がいない施設に配属されるケースも出るようになり、身近な人に業務の悩みなどを相談できないという声も上がっていました。
その結果、療育という業務の想像以上の大変さに直面した際、周囲に相談もできず、キャリアについて将来の展望も描けなくなってしまい、耐え切れず辞めてしまうというケースが散見されました。
こうした職員のモチベーションの課題に対処するための第一歩として、まずは職員にこれまでのキャリアを振り返り、今後どうしていきたいのかを整理・相談できる機会を与えたいと考えていました。しかしながら、既存の階層別研修では、業務知識に関するものがメインで、キャリア形成に関する部分がフォローしきれていませんでした。
そんな時、キャリア形成・リスキリング支援センターからキャリアデザインセミナーとキャリアコンサルティングの提案をいただき、職員が自身のキャリアの棚卸をすることで、モチベーションが上がり、定着にも繋がればと思い導入を決めました。
取組内容と効果
ジョブ・カードの作成によって職場や仕事の魅力に気づくとともに、キャリアコンサルティングによって声掛け・サポートが活発になった
令和7年5月から、運営する12事業所の職員140名中、正職員と嘱託職員は必須、パート・アルバイトの職員は任意とした74名を対象に「ジョブ・カードを活用したキャリアデザインセミナー」を7つの会場に分けて実施しました。セミナーでは、将来が予測困難な時代だからこそ、キャリアを主体的に考える必要があること、またそのための自己理解の必要性について説明を受けた上で、ジョブ・カードの作成のためのグループワークを行いました。
ジョブ・カードを活用して、普段の業務を思い出しながら、自分が得意な業務や工夫できていることを整理し、そこから見えてくる自身の強みを可視化しました。その後、そこで見出した自身の強みを参加者同士で発表し合いました。さらに、対人関係を円滑にする心理学モデル「ジョハリの窓」も取り入れ、「周囲から見た自分の強み」も可視化していきました。強みを見つけるワークを行い参加者同士で互いの強みを伝え合うことで、「自己理解が深まった」「仲間を褒め合うことで絆が強まった」といった声が上がりました。
その後、オンラインで一人ずつ、ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングを実施しました。ジョブ・カードでこれまでの経験を整理し、キャリアコンサルタントと対話したことにより、「大切な仕事をしているということが理解できてよかった」といった感想が上がっていました。また、キャリアを振り返る中で、「この職場で働いてきたからこそ得られた経験や、自身の成長があった」と実感し、「改めてこの職場で働き続けたいと思った」といった声も聞かれました。職員が自分の仕事の価値を再認識し、仕事への誇りや意欲が高まったことに加え、今の職場に対する愛着も新たになったことは、今回の取組の大きな収穫でした。
また、管理者職もキャリアコンサルティングを実施したところ、管理者職が周囲の職員に「今日も笑顔でがんばろう」といった前向きな声掛けをするようになりました。キャリアコンサルティングで、自身の管理者職としての役割を掘り下げたことで、「もっと部下をしっかり見ないといけない」と意識が変わったようです。そういった声掛けから職員同士のコミュニケーションが活発になり、職場の雰囲気が明るくなりました。また、先輩職員や上司が声を掛け、サポートするようになったことで、業務に悩んでいた若手職員が再び元気に働くようになったという話も聞いています。職場内での日常的な声かけや支援が生まれて孤立を感じにくい環境が整ったことが、離職の防止にもつながっていると感じています。
今後の取組
定期的なキャリアコンサルティングとキャリアラダーの仕組づくりで、キャリアアップを描ける職場へ
今回のアンケートでは、9割の職員が「またキャリアコンサルティングを受けたい」と回答していました。定期的にキャリアを振り返る機会を設けることで、働くことの意義や自身の価値観、目標が明確になると思いますので、入職直後、3年、5年など節目ごとの定期的なキャリアコンサルティングを継続したいと考えています。最初は外部のキャリアコンサルタントに依頼しますが、いずれはセルフ・キャリアドックを導入したいと考えています。
職員個々のキャリアの振り返りは、自身が後輩に教える立場になった際にも役立つはずです。振り返りをすることで、過去の自分を客観的に見ることができ、「同じくらいの年次の時、自分もこれができなかったから、こういう風に伝えよう」と、相手の立場・気持ちに寄り添った指導に繋がることを期待しています。
また、そうしてキャリアを棚卸する際に、職員が自分のキャリアパスを具体的にイメージし、段階的・体系的にスキルや能力を習得する目標を立てられるように、キャリアラダーの仕組づくりも両輪で進めていきたいです。
キャリアアップのための指標を明確にし、それに基づいて、将来の目標を定めたり自身の頑張りを振り返る機会を設けたりすることが、職員が定着し、モチベーションを持って生き生きと働くことに繋がると期待しています。
