株式会社鈴廣蒲鉾本店
部長を中心に各階層で「キャリア自律制度」を整備。個人の成長と組織活性化の両立を目指す
活用テーマセルフ・キャリアドック
所在地神奈川県小田原市風祭245
業種食品製造業
設立昭和26年3月(創業慶応元年)
従業員663名
試行導入の経緯
若手の定着のために、部長職のキャリアへの関心を高める
業務で悩み、結果的に退職した新入社員に対して、在職中に適切な支援ができなかったという人事担当の悔しい思いをきっかけに、当社はセルフ・キャリアドックの導入について検討を始めました。「あの時にしっかりと支援できていれば。」という思いを強く持った人事担当は、キャリアコンサルタント資格の取得を決意し、学びを進める中でセルフ・キャリアドックのことを知りました。その中で「社員が定期的にキャリアの相談をできる機会を持ち、目標を持って働けるようになることが人材の定着にもつながるのでは。」と考え、その旨を経営層にも報告したところ同意を得られたことから、組織としてセルフ・キャリアドックの導入に向けた検討を開始しました。
セルフ・キャリアドックの導入には、制度の導入にあたって社内で中心的な役割を果たす部長達に、従業員のキャリア形成支援の重要性を理解してもらうことが大切だと考えました。というのも、部長の世代は「会社がキャリアを決める」時代に若手~中堅時代を過ごしているため、「なぜキャリア自律が必要なのか」ということを理解している人が少ないと思われます。そのような部長達にキャリア自律の重要性に関して実体験を通して理解してもらうことではじめて、セルフ・キャリアドックを「制度として組織に根付かせる」ことが可能となると考えたためです。
そこで、神奈川キャリア形成・リスキリング支援センターの支援を受け、令和6年1月に、部長20名を対象にセルフ・キャリアドックの事前ガイダンスセミナーとキャリアコンサルティングを実施しました。
取組内容と効果
導入支援で見えた課題とセルフ・キャリアドック支援アドバイザーの助言から、「部長キャリアアドバイザー制度」を創設
部長を対象としたセミナーの実施前には、「定年まであと数年しかないのに、今さらキャリアに関する考えを学んでも仕方がないのでは。」との声も一部からはありました。しかし、グループワークを進めていく中で、自分の経歴を生き生きと話し始める様子が見られ、自身のこれまでの人生の歩みや仕事を進める中で考えたこと・感じたことを振り返り、自分の言葉により他者に話すことで、自身の強みや価値観を再認識する良い機会となったようです。
キャリアコンサルティングでは、セミナーで整理した自己理解を基に、今後の目標についてキャリアの専門家であるキャリアコンサルタントから客観的なアドバイスをもらえたことが有意義な体験となったようです。終了後のアンケートでは、「言葉にならないながらも、ずっと胸の内にあった課題が明確になった。」、「これから先のキャリアデザインやライフデザインのイメージが強くなった。」などの感想が出ていました。
一方、「次世代の活躍を促すため、自身の経験をどう引き継げばよいのかがわからない。」、「若手社員にこの会社で長く働いてほしいが、上司としてどうすればよいのかわからない。」など、若手社員の育成に悩む声も聞かれました。それを受けて、キャリア形成・リスキリング推進事業のセルフ・キャリアドック支援アドバイザーから、「部長たちは総じて『会社に貢献したい』という思いが強いが、若い世代の中には『ワークライフバランスを大切にしたい』という価値観を持っている方もいると思う。部長と若い世代のコミュニケーションを増やし、組織活性化につなげるためには、こうした価値観の世代間ギャップを埋めていくことも必要。」と意見をもらいました。また、「『部下のキャリア形成に関する管理職の関心を高めたい。』という課題に対処するためには、管理職である部長が部下とコミュニケーションを取り、キャリア形成支援を行う仕組みをまずは構築してはどうか。」とアドバイスを受けました。
その意見を受け、特に求心力のある3人の部長をキャリアアドバイザーとして選抜し、新入社員と年に2回、1対1でキャリアに関する面談をしてもらう「部長キャリアアドバイザー制度」を創設しました。面談は、「どんなキャリアを作っていきたいか」をテーマに半年間の仕事の成果を振り返り、キャリアの目標について話す場としています。部長たちは、新入社員自らが描いているキャリアの実現に向けて、今できることに気づき、主体的に行動するためのヒントを提供する役割を担います。3人の部長には、実施にあたって傾聴スキルやキャリア理論を学んでもらったところ、面談では学生時代の経験等の話しやすいトピックから入るなど、関係構築のための工夫が見られました。
実施後、新入社員からは、「学生時代のことも聞いてくれたことで、今までの人生を振り返って自身の考えを整理することができた。」、「自分でもキャリアについて考える時間を作ってみようと思った。」という声が聞かれました。また、自身の話を肯定的に聞いてもらったことに安心感があったようで、日常の勤務の中で新入社員の方からキャリアアドバイザーである部長に話しかけるようになり、日々の業務の中で感じた疑問や悩みなど、これまでは自分の中に留めてしまっていた思いを他者と共有する中で解決する様子も見られるようになりました。若手社員が主体的に業務に取り組み、悩みを一人で抱えない環境づくりの一歩を踏み出せたと感じています。
今後の取組
「キャリアは自分で描く」企業文化を根付かせたい
令和7年度より、「キャリア自律制度」という名称で、セルフ・キャリアドックの本格導入をスタートしました。新入社員と部長キャリアアドバイザーとの面談のほか、新入社員へのキャリアセミナー、3~5年目の若手社員へのキャリアセミナーとキャリアコンサルティング、50歳社員へのライフプランセミナーを実施しています。
今後は、初年度の効果測定を行い、対象層の拡大、内容の拡充を図りたいと考えています。それに加え、提案を受けて導入した「部長キャリアアドバイザー」には、部下のキャリア形成を支援するスキルをより高め、「部下の自律的なキャリア形成に寄り添う管理職」としてのロールモデルとなってもらいたいと思っています。そうすることにより、その姿を見た他の部長が「自分もキャリアアドバイザーになって、部下のキャリア支援を行えるようになりたい。」と思ってくれるようになり、いずれは全ての管理職が部下の主体的なキャリア形成に積極的に関わる風土が醸成される、そんなポジティブな連鎖を期待しています。
定期的にキャリアを振り返ることで将来像を明確化し、目標を持って働けるようになることは、人材定着につながると考えています。定期的に自身のキャリアを振り返る機会を提供するセルフ・キャリアドックを導入したことは、当社にとって社員個人の成長と組織活性化を両立させる大きな一歩であると確信しています。今後も改善を重ねながら、社員一人一人が自身の強みを理解し、キャリアを主体的に描ける企業文化を育んでいきたいです。
