日産トレーデイング株式会社
定期的にキャリアを考える機会を提供し、「働きがい」を持てる企業へ
活用テーマセルフ・キャリアドック
所在地神奈川県横浜市戸塚区川上町91-1(BELISTAタワー東戸塚)
業種自動車関連専門商社
設立昭和53年4月
従業員420名
試行導入の経緯
将来を主体的に描けるようになるための軸を持ってほしい
日産自動車のサプライチェーンを支える専門商社としてグローバルに事業を展開する当社では、中期経営計画の柱の一つに「働きがい」を掲げています。その実現に向け、社内横断的な「働きがいチーム」を立ち上げ、「従業員の働きがいをどのように高めるか」をテーマとして検討を進めてきました。
検討を進める中で、将来を期待していた若手従業員の離職が課題として挙がりました。その原因を探る過程で、若手に限らず多くの従業員が自身のキャリア観を持てておらず、将来を主体的に描くことができていないのではないか、という認識に至りました。当社では年2回、上司によるキャリア面談を実施していましたが、「海外に駐在したい。」、「本社で管理職を目指したい。」といった目標は語られるものの、「自分の強みを活かして将来どのような人材になりたいか。」、「仕事を通じて何を達成したいか。」といった、目標に向けての行動の軸となるキャリア観について語る従業員は多くありませんでした。
これまで実施していたキャリア面談が思ったようには機能していないということがわかり始めた中、「若い人材のために何かしたい。」という思いからキャリアコンサルタント資格を取得し、営業部門から人事部に異動した従業員より、「自身の将来を主体的に描けるようになるには、これまでのキャリアの棚卸しをし、自己理解を深められる環境を整備することが重要ではないか。」との提案がありました。そうした環境を整備するための取組を模索する中で、キャリア形成・リスキリング推進事業を知り、神奈川キャリア形成・リスキリング支援センターに問い合わせをしました。そこで、センターの支援を受けて、キャリアの棚卸しに加え、キャリアコンサルティングを実施することができると提案を受けました。
こうした経緯を踏まえ、令和5年度に神奈川キャリア形成・リスキリング支援センターより支援を受け、まずは役員と「働きがいチーム」のメンバーがキャリアセミナーとキャリアコンサルティングを試行的に受けました。その結果、これらの支援内容は、従業員が自己理解を深め、それを基にキャリア設計を行う上で非常に有効であると確信したことから、今後、体系的・定期的に従業員のキャリア支援をしていくことを見据え、セルフ・キャリアドックを導入することを決めました。
取組内容と効果
全ての世代において、「キャリア観」を語ることが日常になった
海外赴任中や出向中の従業員を除く全従業員400名を対象に、導入ガイダンスセミナーとキャリアコンサルティングを実施しました。実施にあたっては、当社のトップ自らがセルフ・キャリアドックの意義やキャリア自律の重要性について発信しました。これにより、会社が従業員のキャリアを本気で考え、支援するという姿勢が社内に伝わり、400名という大人数を対象としたキャリアコンサルティングでありながら、都合が悪い場合には自主的に従業員間で日程調整を行うなどの対応がなされ、キャンセルゼロで完遂することができました。
セミナーは、一般職、管理職、シニア層の3つに分けて行い、年代別によく見られるキャリアの悩みを切り口として、キャリア自律の必要性について学びました。例えば、20代では「今の仕事が自分に合っているか分からない。」といった不安、管理層では、40代~50代前半にかけて直面しやすいとされるパフォーマンスの低下、いわゆる「キャリアの谷」をどのように乗り越えるかといったテーマを取り上げました。こうした悩みに対して、キャリアの棚卸しをし、自分の強みや価値観を明確にすることが、課題の解消や将来像の具体化に繋がるという講義を行いました。
講義後は、ジョブ・カードを活用して、これまでの人生やキャリアの振り返り、自身の強みの可視化を行い、グループワークでその内容を発表しました。そのうえで、作成したジョブ・カードを基に、キャリアコンサルティングを実施しました。
取組後には、「ジョブ・カードを記入することで、自分の強みやモチベーションの源泉が可視化された。」、「キャリアコンサルタントからのアドバイスにより、目標に向けてすべきことが明確になった。」といった声が従業員から寄せられました。キャリアは会社任せではなく、自身で振り返り、描いていくものだという意識が醸成された結果、日常的に自身の働きがいやキャリア観について言葉にする従業員が増えたことも実感しています。また、従業員の異動を検討する場面においても、これまでは「誰がどこに足りないか。」といった業務都合が中心になりがちでした。一方、セルフ・キャリアドック導入後は、キャリア面談のシートに「働きがい」や「キャリア」の項目を追加し、その記録や日頃の対話を通じて、上司・人事課が本人のキャリアプランや「働きがい」を把握しながら、「この異動が本人のキャリアプランと合致しているのか。」といった観点でも議論を行うようになりました。
さらに、この経験をきっかけに、営業部門の従業員3名が新たにキャリアコンサルタントの資格を取得しました。その他にも、従業員から人事課のキャリアコンサルタントに対して、キャリアコンサルタント資格の取得に関する相談が増えていることもあり、今後は、セルフ・キャリアドックを継続的に運用していくため、社内でキャリア支援を担う人材の育成にも取り組んでいきたいと考えています。
加えて、今回の取組を通じて、管理職やシニア層においても、「プレイヤーとしての役割を求められる一方で、部下の育成に十分な時間を割けていない。」、「定年後を見据えたキャリアプランを考える必要性は感じているものの、行動に移せていない。」といった悩みがあることが改めて見えてきました。そこで、これまで年2回のキャリア面談の対象外だった管理職・シニア層についても、今後はキャリア面談の対象に含めることとしました。キャリア面談の運用自体も、キャリア観や働きがいについての話をより深められるよう、評価面談の時期とは離して実施するなど、改善を検討しています。
今後の取組
昇格の節目にキャリアの棚卸しができる環境を整備。高い働きがいに繋げたい
令和7年度からは、セルフ・キャリアドックの本格導入を始めています。20代から50代までの年代別に、昇格の節目に研修と合わせてキャリアコンサルティングを実施することとし、従業員が4~5年に1回、定期的なキャリアの棚卸しの機会を得られるような仕組みを整えました。本取組は、人事部門に所属する2名のキャリアコンサルタントを中心に、外部のキャリアコンサルタントの協力も得ながら実施しています。
また、セルフ・キャリアドックの導入を提案した従業員の発案により、「キャリア相談室」の設置も行いました。キャリア相談室は、キャリアコンサルティングを通じて自分のキャリアを考えるきっかけを得た後に、「では、これから自社の中でどう行動するか?」を相談する場として活用されています。例えば、中途入社の従業員の場合、「自身のキャリアを見つめ直したことにより得られた新たな気づきを業務に活かしたい。」と思った場合であっても、社内にどのような仕事があるのかを把握できていないことで、せっかくの気づきの活用機会を逃してしまうこともあるかと考えました。そのような事態を防ぐため、キャリアに関する相談に加え、業務に関する不安や悩みを幅広くフォローする役割を担っています。
今後もセルフ・キャリアドックを継続することで、従業員一人ひとりが自身の将来を主体的に描き、高い働きがいを感じながら働くことのできる組織を目指していきます。
