高山理化精機株式会社
社員の主体的なキャリア形成を支援し、従業員満足度が顧客満足をつくる

活用テーマセルフ・キャリアドック
所在地長野県松本市笹賀5652-18
業種卸売業
事業概要電子計測器・分析機器・試験機・光学機器・理化学機器や装置の販売と保守校正サービス
設立1949年
資本金5,210万円
従業員85名
試行導入の経緯
従業員満足度(ES)の向上を目指した取組活動として
弊社は2018年からポリシーとしてCSR活動に取り組み始め、顧客満足度(CS)の向上を目指してきました。しかし、営業サービス主体の企業において、顧客満足度を実現するためには従業員満足度を向上させることが不可欠であると考えています。従業員の満足が顧客の満足へと繋がるという考えのもと、従業員満足度の向上を重要なテーマとして捉えてきました。
新型コロナウイルスの影響により、企業運営や従業員の働き方に大きな変化が生じました。この混乱の中で、改めて従業員満足度の向上が組織運営において必要不可欠であると再認識するようになりました。また、弊社では在職5年超を目安として主任職に昇進しますが、主任としての心構えに関する研修が不足しており、役割や期待への理解が不十分であると感じていました。さらに、転職歴がない社員も職業的自己キャリアを考える時間や仕組みが今までなかったため、課長、マネージャー、主任などの役職に対して期待される業務や役割に対する理解が不足していたと思われます。こうした背景から、社員一人ひとりが求められる役割の理解とともに自己理解を深め、その役割の中で自分らしいキャリア形成を促進する仕組みが必要だと考えました。
その中で、長野キャリア形成・リスキリング支援センターの方からジョブ・カードの作成支援とキャリアコンサルティングを受けられるセルフ・キャリアドックの説明を受けました。セルフ・キャリアドックを通して、社員が自己の棚卸しを行い、客観的に自分を見つめ直すことで今後のキャリアについて明確にするとともに、社内では話しづらい悩みやキャリアについての相談を社外の第三者に相談する機会を得ることができ、それを通じて従業員満足度の向上を図ることができることを期待し導入を決めました。
取組内容と効果
中間層にジョブ・カード作成、キャリア研修およびキャリアコンサルティングを実施し、主体的なキャリア形成支援と自己理解の深化へ
今回の取組は、主任層および部課長(マネージャー)層を対象としました。主体的なキャリア形成に向けて、まずは、ジョブ・カード作成を通じて自己理解を深め、社員が自分自身の強みや弱みを再認識した上で、どのような役割を会社から期待されているのか、また、自分らしさをどう活かしていくかを考える機会としました。
また、キャリアコンサルティングを通じて、期待された役割の中で自分らしさをどのように活かしていくのかを考えました。これらにより、自分の強みや考えを整理し、自身のキャリアについての明確化が進み、今後の働き方やキャリアプランを考える機会となりました。
セルフ・キャリアドックでは、自分が目指す方向性の再確認が行われた事で、このプロセスを通じて、社員は自分自身を見つめ直し、改めて求められている役割への気づきを得ることができたと考えています。面談後のアンケートでも、「見つめ直すきっかけとなった」「自分の強みを引き出してもらった」「取り組むべきことが少しわかった」との声があり、参加者が今を肯定された事で自分が今、何を求められ、これから何を成していくのか、この先をどうしていくべきなのかの意識が芽生えたことがうかがえました。今後、期待された役割の中から自分の強みを活かしていきいきと活躍する事を期待したいと思います。
今後の取組
従業員満足度向上と組織活性化の取り組みにより顧客満足度の向上へ
今回の試行結果から従業員満足度の向上には、自己成長を促進する仕組みの充実、社内コミュニケーションの円滑化、そして会社の将来ビジョンを明確にし、社員と共有することが重要であると感じました。これらを踏まえ、自律的なキャリア形成を促進していきたいと考えます。具体的には、資格制度の見直しと充実を図り、その周知を徹底するとともに、社内でのポジティブな声掛けやコミュニケーション機会を創出していきます。また、企業理念や将来ビジョンを明確化し、従業員が安心して働ける環境作りを進めます。さらに、リーダーや主任クラスの研修を充実させることで、言いづらいことも言い合える関係構築を目指し、組織の一体感を強化していきたいと考えています。
昨年から2年間、この事業を活用したことで、社員の意識に変化を感じ、継続した取り組みの大切さを実感しました。今後は、e-ラーニング等を活用した研修やセルフ・キャリアドックの導入を通じて、社員のモチベーション向上や自己研鑽を促進していきたいと思っています。
これまでの取り組みを棚卸しすることで、従業員からは、自分の強みや価値観を明確にし、自分らしさを大切にしながら、ぼんやりとしていた役割期待を自分自身とすり合わせることができたとの声がありました。指示を受けて動くのではなく、自分の意志で「こうなりたい」「こうしたい」という気持ちと、会社の期待が一致することで、主体的に仕事に取り組む機会が増えることを期待しています。また、これにより社内のコミュニケーションが活性化し、お互いを認め合い、支え合う職場環境が築かれることを願っています。
今後、中小企業における働き手の確保は一層厳しくなると予想されます。そこで、前述のように人材育成・人材評価を多面的に計画することに加え、セルフ・キャリアドックの仕組みを導入することで、従業員満足度の向上を目指し、その先の顧客満足度の向上へ繋げていきたいと思います。